推力を与えない固定プーリにVベルトを巻きつけて回転させています.推力を与えることが出来ないため,軸間力制御をしています.そこで,軸間力から推力を求めるためにはどうのようにすればいいですか(式など)?ご回答よろしくお願いします. | |
Vベルトがプーリに押しつけられることによって生じる軸方向の力(推力)の式は,ベルト式CVTにおいて加減速するためにシーブを軸方向に移動させるプーリ推力の場合と同様に考えることにより求めることができます(1)(2). プーリ溝に作用するVベルトの推力Qは,Vベルトが圧縮やせん断変形を生じないと仮定して,プーリに巻付いたVベルトをn個のブロックに分割して考えます(1).図1に,n個のブロックの内,i個目に作用しているそれぞれの力を示します.今,ブロックiがプーリ溝にFiの力で押し付けられ,ブロックの両側面にそれぞれ法線方向の反力Niが作用したとします.この状態からブロックiが張力Tiで引っ張られたとき,ブロック両側面の円周方向に摩擦力Hiが生じ,これがプーリの回転力になります.このとき,Hiは次式で表されます. (1) ここで,はが作用したことによるブロックとプーリ間に生じる動力伝達に必要な円周方向の摩擦係数です, 式(1)の摩擦力はブロックiの両側面で作用しており,これらのi = 1からnまでの総和が有効張力Teになりますので,は次式で表されます. (2) ここで,式(2)の両辺にを乗じますと (3) が得られます.このとき,式(3)中のがブロックiに作用する推力になりますので,推力の総和Qは (4) で与えられます.従って,式(4)を式(3)に代入すると,Qは次式により得られます. (5) 初張力を,張り側張力を,ゆるみ側張力をとし,ベルトの曲げ剛性と遠心張力を無視したとき,であると仮定します.また,プーリに巻付いたベルトの張力変化がEulerの理論に従うものとしますと,有効張力は次式で表されます. (6) ここで,ここで,は「見かけの摩擦係数」で,です.また,はVベルトとプーリ間で動力伝達の授受が行われる巻付け角です. の2倍が軸荷重(軸間力)Wですので,QとWの関係は,式(6)を式(5)に代入して,次式により得られます. (7) 式(7)は,Vベルトとプーリ間の半径方向の力がつりあっているとき,Wにおける最大伝達力時のQを示しています.結果的に,CVTベルトのようにシーブを可動させる場合も(1)(2),VベルトのようにV溝が固定されている場合もQの値は同様になります. その他,Vベルトの半径方向の移動に関する条件などにつきましては,文献(1)(2)をご参照ください. |
参考文献
- ベルト伝動技術懇話会編,新版 ベルト伝動・精密搬送の実用設計,2006年8月養賢堂発行,pp. 103-107.
- 網島貞夫著,工業用伝動ベルト,1968年9月オーム社発行,PP. 187-194.