掲載情報:2016/10/24発行 3422号25面
輸出減で14~15年は減速
石炭産出国の需要回復に期待
日本ベルト工業会統計による過去5年間のゴムベルトの生産量の推移を見ると、11~13年は堅調あるいは順調だった。しかし、14~15年は減速、16年の需要予測では前年実績を上回る見込みとなっているが、上半期の実績は予想を下回る水準で推移した。回復のカギを握っているのは輸出で、特に石炭産出国向けのコンベヤベルトの需要回復が待たれるところだ。
11年のゴムベルト生産は3年ぶりに3万tに達し、前年比7%増だった。内需は東日本大震災以後、自動車の減産などの影響を受けたが、後半には復興需要もあり、同2%増、輸出はコンベヤの活発な資源国需要に支えられ、同23%増と大幅に伸びた。
品種別では、主力のコンベヤは内需が石炭火力向けに加え、下期後半から震災復興需要もあり好調、輸出は旺盛な資源国需要に支えられ同29%増となり、コンベヤ合計では同15%増となった。
一方、伝動ベルトは同1%減。需要の約半分を占める自動車用が大震災やタイの洪水の影響を受けたが、一般産業用向けその他ベルトが伸びたことで微減に留まった。
12年のゴムベルト生産は前年並み。内需はインフラ関係の需要が振るわず、自動車向けもエコカー補助金の終了で停滞気味、欧州金融危機の影響で製造装置向け需要も低迷した。しかし、輸出は旺盛な資源国向けの輸出需要に支えられ、27年ぶりに1万tを超えた。
品種別では、コンベヤは内需が減少したものの、輸出の資源国需要に支えられコンベヤ合計では同10%増となった。
伝動は自動車向け補修用の減少、半導体製造装置やOA機器向けの落ち込みなどにより、同12%減と不調だった。
13年のゴムベルト生産は同1%増。内需は製鉄向けの需要が伸び、震災復興需要や石炭火力発電所向け関連の需要が伸長した。建設機械業界の需要も引き続き堅調に推移し、前年から低迷していた自動車産業も新車投入の効果などにより後半から回復傾向を見せた。
輸出は旺盛な資源国向けの需要に支えられていたものの、後半から大幅に減速した。
品種別では、コンベヤは内需が経済環境好転を受けて同8%増となったが、輸出は新興資源国が非鉄金属などの輸出規制を強化したことが響き、前年までの好調さから一転して同2%減となったことで、全体では3%増に留まった。
伝動は後半の自動車需要回復で、内需は横ばい。輸出も後半持ち直したが同9%減となり、伝動合計では微減となった。
14年のゴムベルト生産量は、同2%減となったものの、4年連続で3万tの大台に達した。
内需は石炭火力再稼動やインフラ建設関係などの復興需要などに支えられ、回復基調となった。輸出は資源国の在庫調整などが続き、年間を通して大幅に減速し、前年まで続いていた1万t台を維持できなかった。
品種別ではコンベヤは、内需は同7%増で1万の大台に乗ったが、輸出は石炭産出国向けの不振が継続したことが響いて同24%減、合計では同8%減となった。
伝動では、内需は特に一般産業向けやOA機器向けが増え年間を通して好調に推移。輸出は円安にも関わらず、海外への生産シフトが進んだことと輸入販売増で減少したが、合計では同8%増となった。
15年のゴムベルト生産は2年連続の減少となり、5年ぶりに3万tの大台を割った。内需、コンベヤが比較的堅調に推移したものの、伝動は自動車生産減が続く中で年間を通してふるわず同3%減。輸出は資源国の不振が続いてコンベヤ輸出の減少に歯止めがかからず、伝動も現地調達化が進む中で年間を通して減少が続き、2年前の実績と比べて7割以下の水準となった。
品種別に見ると、コンベヤの内需は、都市再開発やインフラ建設関係などの需要を含む公共事業の増加に支えられ同2%増。輸出は豪州を中心とした石炭産出国向け需要が引き続き低迷しており、合計で同5%減となった。
伝動では、特に需要の半分を占める自動車向けが、海外への生産シフトやHV車の増産などで減少傾向にあるほか、好調を維持していた工作機械の受注総額が年後半に減速するなど、需要環境の悪化に影響され、合計では同8%減となった。
16年のゴム樹脂ベルトの需要予測
◆ゴムベルトの需要予測は2・6%増
16年の需要予測では、ゴムベルト合計で2万9536t、2015年実績見込み対比2・6%増と微増の予測となった。内需は同1・2%減の2万950t、輸出は同13・1%増の8586tの見込み。
コンベヤベルトは、内需は電力・ガス、セメント、石炭などの堅調推移で同0・2%増の1万998t、輸出は資源開発国向け需要の回復の期待により同17・3%増の7190t、合計生産量は同6・3%増の1万8188tと予測している。
伝動ベルト需要では、合計生産量は同2・9%減の1万1348tを予測。うち内需見込みは同2・7%減の9952t、輸出が同4・5%減の1396tの見込みとなった。
◆樹脂ベルトの需要予測は5%増
樹脂ベルトの2016年需要予測は、生産予想量は同5%増の105万6511㎡の見込み。内需見込みは同8%増の101万8721㎡、輸出は同11%減の3万7790㎡を予測している。
PVC需要は同1%減の18万2266㎡、内需は同1%減の17万7816㎡、輸出は同9%減の4450㎡の見込となっている。
一方、ポリウレタン需要は同4%増の70万2555㎡、内需は同5%増の67万1135㎡、輸出は同14%減の3万1420㎡を見込んでいる。
各社グローバル化を促進 顧客ニーズの対応がカギに
ゴム搬送ベルトの主な需要は、鉄鋼関連をはじめ、石炭・鉄鉱石などの資源開発向けが多い。
国内の需要をみると、鉄鋼関連の向けの需要が好調を推移しているものの、不足や資材の高騰や公共工事の人材不足の影響により、セメント関連などの需要は低調に推移している模様だ。
また海外の需要は、資源開発向けを中心に厳しい環境下に置かれている。
そうしたなか、各メーカーは新たな需要を獲得すべく、グローバル化を加速し、製品やサービスに高付加価値を付けて販売を強化している。
ブリヂストンはユーザーの課題を解決するために、高付加価値を付けたコンベヤベルトの摩耗状況を自動で把握し、その他サービスのシステムを統合して一括管理可能な鉱山オペレーション支援ソフトウェア「モニトリクス」を発表した。同製品は海外向けに展開しているが、需要があれば平行して国内でも対応する方針だ。
横浜ゴムは、カナダをはじめ、中国、ロシアなどの新たな需要を掘り起こすために、耐寒耐衝撃性コンベヤベルト「アイスガードAR」の本格的に販売を開始した。
同製品は、カナダのオイルサンド採掘現場向けに開発を進め、その耐寒性、耐衝撃性において高く評価されたため全世界向けに本格販売した製品。今後は中国、モンゴル、ロシアといった寒冷地に向けて販売を拡大していく方針だ。
また、バンドー化学はグローバル化で競争力を強化するためにコンベヤの生産ラインを刷新する。品質を向上するとともに、生産性の飛躍的な向上を図り、グローバル競争力を強化することで、販売拡大を目指す。
このように、各メーカーは縮小している国内需要に対して、海外展開を加速することで需要を拡大させている。
一方、樹脂搬送ベルトの主な需要先は、食品分野と物流分野である。
特に、国内の食品向けの需要は伸びている。また海外も同様に堅調を推移しているメーカーが多い。
中でも工業用品に比べて景気の影響を受けにくい食品加工分野は、樹脂ベルトメーカー各社のメインターゲットとなっている。
ひと口に食品加工といっても製パン、製菓、食肉、鮮魚など、扱う食品によって搬送ベルトが求められる機能はかなり違っている。さらに絶えず塩水や油分、粉体にさらされて傷みも早く、取り替え需要が多い。
この傾向は食品加工分野では、さらに細分化すると見られ、各メーカーは、顧客の課題に対して、どれだけ解決策を提案できるかが鍵となってくる。
例えば、樹脂ベルト専門メーカーのフォルボ・ジークリング・ジャパンは新製品を拡販するため、14年に初めて大阪で開催した「フォルボフォーラム」を15年は地方を中心に博多、金沢、仙台の3ヵ所で展開した。製品紹介だけでなく、フォーラムを通じ、顧客の困りごとに対して実例を示すことで、顧客の問題解決につなげる考えだ。
今後、各メーカーにとって、顧客のニーズに対応するために、販売代理店の強固な関係を築くことがますます求められてくるだろう。
ゴムベルト国別輸出入
米国輸出が2年連続1位
財務省貿易統計をもとに、日本ベルト工業会がまとめた2015年年間の輸出実績によると、輸出総額は442億2100万円で前年比8%減となった。コンベヤの不振や、伝動ベルトの現地生産化が進んだことなどが響き、ベルト全体の輸出額を押し下げた。
輸出先上位10ヵ国を見ると、1位は2年連続となるアメリカで64億5800万円。下半期にやや減速したため、前期実績を8%下回った。上半期に1位だった中国は、同9%減の61億9300万円で2位となった。3位は資源輸出の不振が続くオーストラリアで、同25%減の37億7100万円。以下、4位は台湾(同8%増)、5位は香港(同4%減)。銅・亜鉛など鉱業生産が好調なペルーは、同47%増で6位に入った。
一方、15年年間の輸入額は106億7900万円で、同4%増となった。地産地消の流れから、ベルトメーカーの海外進出が進んでおり、国内自動車生産が減少傾向にある中でベルトの輸入は堅調に推移している。国別の1位は中国で、同10%増の26億5300万円となり、全体の24・8%を占めている。2位はインドネシア(同4%増)、3位はフランス(同2%減)。以下、4位はイギリス(同14%増)、5位はタイ(同8%
減)となった。